12月上旬の夕方、僕は静岡理工大のグランドに足を運びました。静岡理工大といえば、現在公式戦163連敗中。しかも、静岡学生リーグの中で毎シーズンのように最下位。大差がつくのが当たり前で、ときには30点も献上したこともありました。
実は僕も、静岡大学リーグを見に行くとき、静岡理工大の試合は長くなるので、出来るだけ観戦を避けようとしてきました。
ところが、今年の春のシーズンあたりから新聞の結果を見ていると、その点差が縮まってきているのに気が付きました。0対1、4対8、1対6など試合になっていました。そして、今秋の静岡産業大戦では、試合は延長にもつれ、連敗記録が止まるかという期待が高まりました。しかし、延長12回の末、サヨナラ負け。壁を破ることはできなかったものの、確実はチーム力は上がってきているなと感じました。
その静岡理工大を牽引するのはエースの小澤倫也(185cm70kg、右投左打)です。チームの連敗の中、1年秋から黙々と投げ続ける小澤。どんな選手なのか、どうしても知りたくてグランドに伺い、直接話を聞かせてもらいました。
― 静岡理工大に入った理由から教えてください。
「強いチームに入るより、強いチームと戦った方がいいと思ったので。ココしかないと決めました」
― この3年間を振りかえって、変化したことはありますか?
「やっぱり昨年、坂田嘉之監督が来てくれてから、チームにまとまりが出てきました。それまでは毎日、練習は自主トレみたいな感じでしたので」
― 特に、この春からチーム力が上がってきた印象がありますが。
「1年生にいい二遊間が入ってきたのが大きいと思います。昨年まで1戦目でも相手がエースをぶつけてくることがなかったのが、今年はフルメンバーできてくれる。やっぱり、相手がエースだと燃えるものがあります」
― この秋は静岡大学リーグの選抜に選ばれて、首都大学リーグの2部選抜と対戦。2回を無失点に抑えましたが手ごたえ的にはどうでしたか。
「まず、選抜に選ばれたことが嬉しかったです。自分の持ち味を発揮して、チームも勝てた。久々に試合で勝ったという感じで…。(静岡)理工科大も、こういうチームにしたいなと思いました」
― 現在のスピードのMAXを教えてください。
「138キロです。今年の春の浜松大とのオープン戦で測ってもらったときのスピードです。それ以降は、測っていないのでわかりません」
― スピードに対するこだわりはありますか?
「140キロを出してみたいですが、一番自信のあるのはスライダーです。」
― 変化球はスライダー1本ですか?
「はい。今後はスライダーだけではきついと思うので、緩急をつけるボールが欲しいです。リーグ戦中に相手のピッチャーを見ながら研究をしています」
― 最後に、来年の目標を教えてください。
「とにかく1勝すること。そのために、このオフはウエートトレーニングや走り込みで体力をつけようと思っています」
― ということは、来年は1戦目だけでなく、場合によっては2戦目に投げることもありそうですね。
「もちろん、全力でいきます」
小澤は大学3年生ということで就職活動を始めているそうですが、やはり野球を続けていきたい気持ちを持っているとのこと。そんな話を聞くにつれ、僕の個人的な意見として、ぜひ野球を続けて欲しいと思ってしまいました。
こう言っては失礼ですが、小澤の置かれている環境で140キロ近く出している、そのポテンシャルの高さにすごく惹かれます。投球フォームは我流、授業の関係で練習時間は短い。とても野球をプレーするにあたって恵まれてはいません。だからこそ可能性を秘めた本格派です。
来春は、まずは1勝。どんな形で連敗を記録を止めてくれるのか、すごく楽しみです。
<プロフィール>
■小澤倫也(おざわ・みちなり)
185cm70kg/右投左打。1989(平成元)年7月13日生まれ、静岡県島田市出身。初倉小時代は「大中ソフトボール少年団」でソフトボールをプレー。初倉中で野球を始める。島田工では2年夏に初戦で清水東と対戦し1失点完投勝利。チームを3年ぶりの勝利に導く。2回戦では延長11回の末、星陵に1対2で敗退した。静岡理工大では1年秋から登板。この冬からは主将を務める。最速138キロの速球とキレ味抜群のスライダーを武器にチームの連敗記録ストップに挑む本格派右腕。