今日から「チャリティー東海地区社会人野球大会」が始まりました。初日の初戦は日本プロスポーツ専門学校vs東海理化の試合が行われました。日本プロスポーツ専門学校というチーム名は耳慣れない方も多いと思いますが、実は常葉学園菊川の2008年選手権準優勝メンバーの酒井嵩裕が在籍しています。今日はAさんと名乗る、東海理化ファンの知り合いがレポートを送ってくれました。
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酒井はもとより「野球が楽しい!」と全身からあふれさせるようなプレーをする選手だ。陽気に、カラっと、爽やかにボールと戯れる。その酒井の本質的なイメージは変わっていない。しかし、3年ぶりに見る酒井は、少し、そこに湿度があるような、野球に対する執着を滲ませるようになっていた。
酒井は、常葉学園菊川のレギュラーとして、2年春にセンバツ優勝、夏に選手権ベスト4、そして3年夏には正遊撃手として選手権準優勝を果たしている。全国に常葉学園菊川の名を知らしめた、フルスイング打線の中軸を担う、まさにスター選手だった。
その看板を引っ提げ、進学したのは東都の強豪・亜細亜大。そこでも大きな期待を受け、入学早々の1年春にはメンバー表に写真とともに掲載された。
しかし、昨年の秋頃に酒井の消息が途絶えた。大学を退学し、地元・掛川に戻ったと人づてに聞いた。
「大学をやめて、アルバイトをして。バッティングセンターとかで遊びで野球をやるぐらいで。でも、やっぱり野球がやりたい。もう一度、本気で野球がやりたい。そう思って、インターネットとかで検索したりして。それで、ここを見つけて、この4月に入学しました」。
酒井が新天地に選んだのは、日本プロスポーツ専門学校。愛知県愛西市にあり、硬式野球部は企業チームとして、愛知県野球連盟に加盟している。
2004年に創部され、まだNPB入りを果たした選手はいないが、2009年に総監督に就任した石井晶氏は阪急ブレーブスでオールスター出場も果たした元プロ野球選手。数球団でコーチを歴任し、阪神タイガースでは2軍監督も経験した。育成のプロともいえる石井氏のもとで、選手たちは腕を磨いている。
「チームにはすぐなじめました。先輩たちもいい人ばかりで、よくしてもらってます。今は、とにかく、野球ができるのが楽しくてしょうがない。嬉しいです」。
酒井は、何度も「野球ができるのが楽しい」と繰り返した。今後の目標を尋ねても、「今は野球をやらせてもらってるだけで満足です」と言い切る。野球に飢えていた酒井にとって、今は一試合でも一打席でも経験したいのだろう。打席でも、その思いがはっきりと感じ取れた。
この日の試合では、4打数3安打。3番ショートでスタメン出場し、初回にいきなりライト前安打を放つと、2打席目にはセンター前安打。軽く振り抜くスイングはブランクを感じさせなかった。3打席目には死球で出塁すると、4番・中居翔の本塁打でホームベースを踏んだ。4打席目はサードゴロに倒れた。
9回を終わって、2-2の同点。試合は延長戦に突入し、10回からはタイ・ブレークが行われた。社会人野球では見慣れた風景だが、酒井にとっては初めての経験となった。
社会人野球のタイ・ブレークで主に採用されるルールは、1死満塁から回がスタートし、最初の回の先頭打者は選択できる。つまり、チームにとって、その日一番期待できる打者が最初にバッターボックスに入ることになる。今日、日本プロスポーツ専門学校にとっては酒井だった。
酒井は期待通り、レフト前にタイムリー安打を打ち、日本プロスポーツ専門学校は勝ち越し点を奪う。その裏に、東海理化は富川平が満塁本塁打を放ち、サヨナラ勝利を決めたが、日本プロスポーツ専門学校の善戦は、予想外のものだった。
「1週間ぐらい前から調子は悪かったので、今日はたまたまです。試合と調子は関係ないので」
と、常葉学園菊川の選手らしいことを口にして酒井は破顔一笑。
「一つ勝って、ヤマハとやりたかったです。戸狩(聡希)や町田(友潤)と対戦したかった」
野島(大介・NAGOYA23)くんとかも対戦する機会がありそうだねと言うと、この日一番の笑顔で、「みんなと対戦するのが楽しみです」と答えた。
「野球をするのが楽しい」。そこに「野球をやり続けたい」という執念が加わった。この先に何があるのか。酒井の野球人生にどんな展開が待っているのか。酒井のプレーを見守っていきたい。
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Aさんありがとうございました! 「どの媒体に書くか悩んだけど、酒井情報を一番渇望してるのはこのブログの読者だと思うので(笑)」ともったいぶって送ってくれただけあって、入魂のレポートです。僕も近いうちにチェックしに行こうと思います!
<写真/ハツラツとしたプレーを見せた酒井嵩裕(日本プロスポーツ専門学校)>