静岡を巣立つ高校球児~天野竜編・上
好評連載中(のはず!)の「静岡を巣立つ高校球児」。編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。(第1回中澤彰太編、第2回藤山知明編、第3回大友伸久編、第4回小林弘郁編、番外編渡邉隆太郎、第5回今本茂雄編、第6回増田友輔編、第7回夏目旭編)
第8回は、強打の大型捕手として密かな注目を集めた天野竜(春野3年)。卒業後は日本福祉大に進学する天野のインタビューを2回にわたってお届けします。
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静岡を巣立つ高校球児~天野竜編・上
★激ヤセから始まった高校生活
天野竜は北遠の山間部に位置する春野に生まれた。小学校1年の時に、春野ジュニアアトラスで野球を始め、6年生の時に本格的にキャッチャーとなった。春野中でも同じメンバーと野球をやり、そのほとんどが春野高でもチームメイトになった。
その頃は体が大きいというよりは、太っていたという天野。しかし、高校に入ると、急激にやせ始めた。「入学した時と、2年の最初の時で17キロぐらい体重落ちて。60キロ台になってました。食べる方も減ってはないんですよね、前より食べてるぐらいで」。高校の練習はしんどさも感じたが、理由として思い当たるほどではなかった。普段から顔を合わせている家族や同級生は気付かないほど緩やかな変化だったが、制服はもちろん買い直すことになった。
「走れるようになったなっていうかんじが一番ありましたね。軽くなったっていうか」。 そんな高校生活の始まりだったが、野球部では入学して6月頃には捕手を守り始め、夏も出場した。人数の少ない春野ではすぐに主力選手となった。
★忘れられない敗戦
天野が一番印象に残っている試合は、2年夏に静岡市立商を相手に、2対20の5回コールドで敗北した試合だという。「この試合だけは全然手も足も出なくて。今まではもうちょい点は取られなかったんですけど、20点も取られて。全然通用しないんだなと思って」。
静岡市立商の強さというよりは、100校以上がひしめく、静岡県の中心である静岡市のチームのレベルの高さに打ちのめされた。捕手として、打者の一番近くで見ていた天野は自分たちの野球との違いを痛感した。「すごい悔しかったですね。1回、2回は0点だったんですよ。その時は意外にいけるのかなって気がしたんですけど、3回、4回の2イニングで20点ですよね。何もできなかったですね。なんかしなきゃって気持ちはあったんですけど」。打たれてからリズムが悪くなり、四球や守備の乱れでチームが崩れていく様子に、なすすべもなかった。
春野は練習試合でも負けることが多く、天野は公式戦で勝利を経験することはできなかった。天竜区の4校の学校で行われる準公式戦で勝ったことがあるぐらいだという。その数少ない勝ち星よりも、この敗戦の悔しさが天野の頭の中に残った。
★トレーニングでパワーアップ
その悔しさもきっかけとなり、夏が終わってからはそれまでやっていなかったという筋力トレーニングに取り組んだ。もともと、天野に期待をかけていた前任の部長に勧められていたという。校内のトレーニング室には新しい器具こそないが、最低限のものは揃っていた。それからは後輩2人と一緒にトレーニングに打ち込んだ。
「やっぱりバッティングが一番変わりましたね。送球もすごい良くなりました。今までトレーニングよりも細かい動きというか技術の方が野球じゃ大事だなって考えてたんですけど、その技術に対応できるような体も作らないといけないなって感じました」。トレーニングをするうちに、どうしたら筋肉が増えるのかということを考えて食事も取るようになった。今まで食べることが少なかったという野菜も食べ始め、そのうち、高校に入ってから落ちた体重が戻り始めた。
トレーニングをしてからは、ホームランが打てるようになり、打席で長打を狙えるようにもなった。春野野球部OBでもある兄が大会を見に来て、「当たった時の音が他の人と違う、打球も違う」と驚いたこともあった。
★怪我によって得たもの
手ごたえを感じていた天野が手を骨折したのは10月頃だった。土曜の練習試合でファウルチップが当たり、腫れて痛みもあったというが、日曜の練習試合にも出場。月曜に病院に行ったところ、即手術が決まった。部員が少ない春野で、不動の捕手だった天野が抜けることは練習試合でも大変なことだった。骨折がわかった時も、天野は自分の心配よりも、「みんなに迷惑をかけちゃうな」という気持ちが先に立った。
トレーニングも順調に進み、冬に向けて、体を大きくしていこうと力が入っている時期だった。2カ月間は走ることぐらいしかできなくなり、最初はどうしたらいいんだろうと悩んだという。「でも、この抜けている期間を大事にしなきゃいけないなって。キャプテンとしてみんなに声をかけなきゃいけないな、自分の思ってることを知ってもらわないといけないなって。自分としてもここで体を大きくしないとする時はないだろうなって思いましたね」。バランスを考えながら食事も増やし、学校には弁当の他におにぎりを持ってきて、授業の合間に食べるようにした。元から横に大きかった天野は太りやすい方なのか、そこまで苦労はせずに体重を増やせた。
「ホームランがポンポンって出てた時期だったから、骨折しなければもう少し打ててたのかなとは思うんですけど、今考えてみると、あそこでずっといってても体重は全然増えてないと思うので。そういうふうに考えると、骨折してよかったということはないんですけど、いい経験というか、時間を過ごせたような気がしますね」。体を動かせるようになってからは増やした体重をキープすることを心がけ、3年の夏前には80キロとなった。入学当時の体とは違い、筋肉のついた重みとなった。
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続編は近日中にアップします!(編集部H)
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