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2013年2月13日 (水)

静岡を巣立つ高校球児~小平倫敬編・下

 オフシーズン企画として始まった「静岡を巣立つ高校球児」もとうとう最終回。編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たち10人に会ってきました。
 前回に引き続き、小平倫敬(川根3年)編です。 「静岡を巣立つ高校球児~小平倫敬編・上」はコチラ

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静岡を巣立つ高校球児~小平倫敬編・下

Dsc_8227★ボールをペンに握りかえて
 朝練に行く前に5時起きで勉強するなど、「勉強も好き」だという小平。物理や化学が得意な理系だ。鈴木監督に聞くと学年で1番かそれぐらいの成績だったそう。ただ、野球に夢中だったこともあり、卒業後のことは3年になるまで考えていなかった。
 小平が野球以外に好きだったものが星だった。澄んだ星空全国2位にも選ばれたことがある川根に生まれ育ち、自宅の屋根の上から星空を見たり、図鑑を見て宇宙の広大さに思いを馳せることが趣味だった。そして「好きなことなら続けられるかなって」宇宙について大学で学びたいという希望を持ち始めた。野球で誘われた大学もあったが、自分の学力で進学することを決めた。
 高校野球が終わってからは、受験勉強に打ち込んだ。それでも、進学先で野球を続けることは決定事項のように頭の中にあった。「野球が好きで、大学行っても、野球やるでしょ、やるべきでしょっていうのが自分の心の中にあって。1回戦で負けちゃって、今も悔いが残ってて。だったら、その悔いを大学で晴らそうかなっていう思いが強かったので」。ボールを握ることはできなくても、野球への思いは尽きることがなかった。

★新天地は国立茨城大
 宇宙関係が学べる大学を探し、昨年末に推薦入試で国立茨城大に合格した。水戸には大学の様子を見に行った時に初めて訪れたというが、その時に早速グランドで野球部の練習を見学させてもらったそう。
 関甲新学生リーグに所属している茨城大は、昨秋、2部に昇格した。その原動力となった竹井大貴という2年生左腕が小平は気になったという。「練習見てても、周りの動きとちょっと違って、一人だけ映えて見えたなっていう印象でしたね」。竹井は日大鶴ケ丘出身で、2年時には甲子園に出場。3部では昨秋、2回もノーヒットノーランを達成している。今春もエースとして活躍が期待される左腕に、小平も同じ左腕として、色々なことを学ばせてもらうことを楽しみにしている。
 川根高と同じく、茨城大も部員数が比較的少ない。チャンスは多く、左腕の優位性も生きるのではないかと考えている。「行ってからすぐレギュラーは取ってみたいと思いますし、あわよくばピッチャーもやってみたいなって。やっぱり試合出るのが好きなので」。

★川根のドクターK?
 アピールしたいところは、三振の取れる投球。それは自分の売りとして、今後も続けていきたいそう。掛川西との練習試合の8回13奪三振は「ナイターっていうのもあったんですけど…」というが、毎試合のように8、9三振は奪う。空振りの取れる高めのストレートには自信を持っている。
 課題としては受験勉強で鈍った足の筋肉を戻すことと、左打者への投球を挙げる。今までは抜ける球が多く、左打者の内角を攻めきれなかった。ストレートをしっかり左打者の内角に投げ込めるようになることはもちろん、新たな変化球の習得も目指す。「フォークボールに挑戦したいなと。チェンジアップもちょっと考えてます。左バッターにもうちょっと見せるボールが欲しいなと思って」。現状、スライダーとカーブしかない持ち球に、落ちる球を加えて、投球の幅を広げることを目論む。
 現在は野球部の練習に参加して、走り込みなどを行っているが、「勉強してる間、そんな体型変わらなかったから、大丈夫なんじゃないかなと思って練習やったら、全然、体動かなくて…」と苦笑い。現役の体を取り戻し、2月下旬からは投げ込みも始める予定だ。

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★小平倫敬からのメッセージ
 現役球児へのメッセージを聞くと、少し考えこんだ。「2年半って本当短いって思ったんですよ。あっという間だったなって。それは自分が終わってみないとわからないことだったので、そういう実感をする前に時間が短いってことを自覚して、練習に励んでもらいたいですね。時間の大切さっていうのは自分自身感じたので」。野球に勉強に全力で取り組んだ高校生活だったが、走り込みはもっとしておけばよかったという。「自分の限界を知らない分、期待も大きくなっちゃって。そう言う面ではもっと走ってたらいいピッチャーになれたんじゃないかなっていうのはありましたね」。
 将来の夢を尋ねると、「夢、ですか。夢…はそんな決まってないですね。宇宙の研究を続けながら、野球も続けていきたいなって。やっぱりその2つが自分の今好きなことのツートップなので、将来ずっと携わっていければいいなって思いますね。どっちもできるか、どっちか。宇宙の関係になって草野球やったり、それか社会人とかの誘いも、もし受けられれば…」。何度か話を聞いて、宇宙関係の仕事に就くことを志していると思い込んでいたこっちが面喰うようなことを何気なく言った。「野球も考えてますよ。もし、社会人とかにアピールできて、評価とかしていただけたら、社会人でもやってみたいなっていうのはありますね」。
 この日は曇りで星は見えなかったが、晴れた夜には空が星で埋め尽くされるという。「野球中心で考えているので、あまり帰ってこれないと思います」。川根の星空の下で過ごせる残りわずかな時間を大切にしながら、練習に励んでいる。

鈴木亮監督からの贈る言葉
言われなくてもやる男でチームも全部まとめてくれました。今、茨城大は関甲新学生リーグの2部なので、1部に昇格させられるような選手になってほしいですね。左腕ですし、チャンスもあると思うので頑張ってほしいです。

■小平倫敬[こだいら・みちたか]
投手/川根3年/175cm70kg/左投左打
小学4年で野球を始める。小学5年から投手となり、川根高では2年夏からエース。しなる肘から空振りの取れるストレートを投げ込む左腕は、茨城大で野球と勉強に打ち込む。
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 何度か話をした小平が茨城大に合格したと知った時には、ぜひ「巣立つ」をお願いしたい! と思いました。しかし、それまで紹介してきた選手は全員野球に力を入れる私学や社会人に進み、将来はプロか社会人を希望する選手。国立大に進む小平が野球で取り上げられることをどう思うかわからなかったので、鈴木監督にお伺いをたて、本人に意向を聞いてもらうことに。そこで快諾をしてくれて実現しました。実際に話を聞くと、想像以上に大学野球に向けて張り切っていました。「バイトするんですか?」と聞いて、「野球中心で考えてるので」なんて返されてしまったりして申し訳なかったです。「野球も考えてますよ」の流れの時には「巣立つ」史上一番の驚きが。野球で取り上げられることを嫌がらないかなと悩んでいたのは、杞憂でした…という編集部Hの取材裏話でした。

 「巣立つ」はブログ内連載という微妙な立場でありながら、取材をお願いした全チームが協力して下さったので、大変ありがたかったです。一人一人にじっくり話を聞かせてもらったので、びっくりするような話や笑ってしまう話を色々教えてもらいました。それぞれの進路での活躍を大いに期待したいです。もちろん追跡レポートもしますのでお楽しみに!
 現在、受験勉強に励んでいる高校3年生も多いと思いますが、進学先等が決まって、野球を続ける予定がある選手はぜひ教えてください。最終回と言いつつ、編集部Hが押し掛けるかもしれません。(編集部H) 

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コメント

静岡を巣立つ高校球児〜編集、ご苦労様でした。選手の活躍を一層、期待したくなる記事でした。

投稿: ブー父 | 2013年2月19日 (火) 11時44分

ブー父さん
コメントありがとうございます。
そう言っていただけると、記事を書いた甲斐がありました。
選手の言った言葉をできるだけそのまま書いたので、選手たちの人柄も少しは伝わったかと思います。
彼らの大学、社会人での活躍が楽しみです!

投稿: 編集部H | 2013年2月20日 (水) 23時03分

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