静岡を巣立つ高校球児~小平倫敬編・上
最終回を前に、突然、「あの企画面白いですね」と言われることが増えた「静岡を巣立つ高校球児」。編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会ってきました。(第1回中澤彰太編、第2回藤山知明編、第3回大友伸久編、第4回小林弘郁編、番外編渡邉隆太郎、第5回今本茂雄編、第6回増田友輔編、第7回夏目旭編、第8回天野竜編)
10人目となる最終回は、エースで4番、主将として川根を引っ張り、肘のしなりで私、編集部Hを魅了した小平倫敬(川根3年)。卒業後は茨城大に進学する小平のインタビューを2回にわたってお届けします。
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静岡を巣立つ高校球児~小平倫敬編・上
★全国制覇の空手有望選手が…
小平倫敬は川根本町の町民にも「山の方」と言われる集落で育った。十数軒が点在し、年の近い者はごくわずか。小学校も中学校も町のバスで通学した。
小学4年の時に野球を始めるが、小平は小学校に入る前から空手を習っていた。野球を始めてからも並行して空手を続け、小学5年の時には東京で行われた全国大会で優勝。小学6年でも全国準優勝を果たした。しかし、野球に夢中になった小平は中学からは野球一本にすることを決めていた。周囲は空手の有望選手だった小平を当然引き止めたが、小平の決意は固かった。家族も小平の意思を尊重し、見守ってくれたという。
野球を始めた時には外野を守っていたが、左投げということもあり、小学5年の終わり頃からは投手を始めた。中川根中に入学した当初も外野を守り、ほとんど投手となったのは中学3年の時だった。
★渡邉隆太郎の衝撃
中学2年の時に、小平はとんでもない投手を目撃した。「渡邉です。帝京に行った渡邉隆太郎。東海大翔洋中と中川根中で練習試合をやらせてもらったんですけど、その時にすごかったですね。あとで同級って聞いて、すごいびっくりしたのを覚えてます。僕の周りとガタイが全然違ったので。球も速かったですね。中学の時からずば抜けてました」。中学2年の時に渡邉といえば、東海大翔洋中のエースとして全国準優勝を果たし、県内では安打すらほとんど許さなかったという別格の存在。小平も1打席だけ打席に立ったが、ストレートにはとても当たらず、スライダーをひっかけてショートゴロだったという。
★野球の楽しさで通学の苦労も乗り越える
川根高は中川根中と中高一貫として連携している。そのため、小平は中学時代にも川根高のブルペンで練習をすることがあり、川根高の鈴木亮監督に指導や話をしてもらったという。通学できる高校がほとんどなかったこともあるが、川根高に進学することに迷いはなかった。
小平の住む集落から川根高に行くには、原付で細い山道を下ってきて、自転車に乗り換えるか、大井川鉄道で通う。校則では最寄駅までしか原付で来ることは許されていない。猿や鹿も出没し、冬期には凍結もする山道で、原付で転倒したこともあるという。天気が悪い日には、親の送迎が不可欠だった。
通学は苦労をしても、野球部にはすぐに馴染めた。「地元の先輩がそのまま上がってたりもして、知り合いも多かったので。不安よりも高校野球の楽しみの方が大きかったですね」。
1年夏からベンチ入りを果たし、外野と投手を兼任。その頃から腕の振りの良さは人目を引くものがあったと聞く。ただ、「アウトはフライか三振がほとんど。だからリズムが悪い」と鈴木監督が言う通り、要所で三振を取る投球が多かった小平。しかし、2年春の石川遠征では全く違う投球を展開した。「低めに集めて、コントロールよく抑えて、試合が1時間30分とかで終わって。それが、いつもランナーためたけど要所で三振取って抑えてっていう自分の試合の印象と違ってて、こういう試合もあるんだなって」。そういう投球をまたしたいという願望もあるが、その時はたまたま好調だったそうで、それ以降はできなかったという。しかし、自分の新たな可能性を知ることができた試合だった。
★エースで4番、主将の最後の夏 初めて1番を背負った2年の夏は、初戦の袋井戦であっけなく終わった。5回まで1失点と好投していたが、6回に打たれ始め、止まらなかった。この回袋井は一挙10点を奪い、コールドで試合終了。それは自分でも驚くほど、突然の乱調だったという。苦い思い出だが、5回終了の整備の後に打たれ始めたことから、それ以降は整備の間の「間(ま)」を大事にするようになった。
すぐに動き出した新チームでは主将を任された。「3年の人数が少なかったので、自分がやらなきゃ、一人で引っ張ってかなきゃってそういうのもあったんですけど、最終的にはみんな本当支えてくれて、そういう面でキャプテンできてよかったなって思ってます。自分が一番やらなきゃ周りもついてこないなっていうのがあったので、そういう意味でキャプテンとしての威厳というか、雰囲気作りっていうのが一番大変でした」。
主将としてチームのために奮闘しつつ、冬には体作りにも取り組んだ。投手の基本は下半身と考え、ボールはほとんど持たず、延々と走り込む。元々そう食べる方ではなかったが、食事も増やし、茶碗5杯は白米を食べたそう。体重が増えたことで、3月にボールを握った時には投げた感触も違っていた。ただ、結果にはなかなかつながらず、春の大会は2回戦で敗退した。
6月には練習試合で掛川西から13三振を奪う力投を見せた小平。抽選会で自らクジを引いた夏の大会の組み合わせを見て、2つ勝って静岡商と対戦したいと意気込んだ。しかし、結果は1回戦敗退。先発マウンドに立った小平は、初回に3点を奪われたことで呆然として、それ以降どんな投球をしたか覚えていないという。結局、公式戦では満足のいくピッチングをできないまま、高校野球を終えることとなった。
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続編は近日中にアップします!(編集部H)
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