静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・下
オフシーズン企画として始まった「静岡を巣立つ球児たち」。今年も編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
前回に引き続き、藤本大輝(浜名3年)編です。 「静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・上」はコチラ!
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静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・下
★万全で迎えられなかった夏
3年生になった4月、春季西部大会の浜松商戦で藤本は肩に痛みを感じた。肩も上がらない状態に、病院に急行。疲労などが原因で肩周辺の筋肉を傷めているという診断が出た。一時期は歯ブラシも左手を使い、頭を洗うことすら苦労したという。
手術で治る類のケガではなく、インナーマッスルを鍛えたり、病院に通ったりと地道なリハビリが続いた。ただ夏の大会まで時間がなく、痛みを感じても投げ込みをするしかない。少しずつ回復はしたものの、長いイニングを投げたのも夏の大会開幕直前、7月に入ってからだった。ヤマハ豊岡グランドで行われたこの練習試合を私も見に行ったが、前年秋とはかけ離れた状態に、ただ、無理をしないでほしいと願ったことを覚えている。それでも、藤本はこの試合で希望を見出していた。「ケガをしてから、あの試合で初めて長いイニングを投げました。全然いい球がいかなくて、ホームランも打たれて、散々な結果だったんですけど、長いイニングを投げれたってことは自信になりました」。最後の夏に向けて、藤本はやれるだけの努力はし尽した。
「1回戦(静岡農戦)は自分の思ったように投げれたんですけど、2回戦(静岡東戦)は投げてる途中に、痛みっていうか、疲労が出ました。一応完投はしたんですけど、自分で点数つけても30点ぐらいの出来だったんで、次の磐東戦、大丈夫かなって思いました」。不安の中で迎えた3回戦の磐田東戦は2-5で敗退。悔いが残る結果になった。
★東都5連覇中の亜細亜大へ!
子供の頃からプロ野球選手が将来の夢で、高校卒業後も野球を続けるつもりだった藤本。しかし、2年生の春に東都の強豪・亜細亜大に声をかけられた時には、「最初は練習が厳しいって聞きますし、ちょっと…」と腰が引けていたそう。練習は嫌いではなかったが、亜細亜大のレベルになると不安があった。ただ、当時の亜細亜大エース・東浜巨(現ソフトバンク)の活躍には憧れも持っていたという。揺れていた藤本だが、「ケガをして自分の思った通りできない時期が続いたんで、そういう強いチームでやるのもありかなと思って」と、東都5連覇中の亜細亜大で自分を追い込むことを決めた。かっこいい縦縞のユニフォームを着てみたいという小さな夢も叶うことになった。
★制球力で勝負
大学でアピールしていきたいところは制球力とストレートのキレ。「一番磨いてきたところ。球速よりも制球力を見てほしいですね。ピッチングに関してはかなり自信があるので」。縦に落ちるカーブで、打者の打ち気を反らしたり、緩急も活用している。「真っ直ぐだけだと、強いチームになってくるほど合ってくる。そういうのを防ぐためにも変化球を上手く使わないと。ストレート一本だと打たれると思うので」。
制球力がある投手にしては珍しく、藤本のフォームは荒削り。今までは思うようにやらせてもらい、厳しく指導をされることはなかったという。尊敬する前田健太(広島)のようにバランスのいいフォームになっていくのか、藤本の個性がさらに出てくるのか、大学ではフォームの進化も楽しみにしたい。
★現役球児へのメッセージ
最後に現役球児たちへ伝えたいことを尋ねた。「高校野球っていうのは人生で一回しか味わえないんで、やっぱり僕みたいにあれやっとけばよかったなと思わないようにやってほしいと思います。やっぱり努力した方が絶対いい。努力すれば最後に評価っていうか、勝てるようになるんじゃないかと思うんですけど」。まるで、自分の努力が足りなかったかのように言った藤本だが、高校入学前に70キロ以下だった体重も現在は80キロあり、体作りは着実に進んだ。それでも、「下半身のトレーニングをもう少しやっておけばよかった。ケガをしない体づくりをしておけば野球人生変わっていたんじゃないかなと思うんですけど…」と貪欲な姿勢を見せる。
現在、肩の痛みはなくなり、あとは実戦感覚を取り戻すだけ。大学1年での目標に挙げたのは、「まだ肩をケガして実戦で投げていないので、どれだけできるかまだわからないんですけど、やるからにはベンチ入り」。無理はしないように、と自分に言い聞かせながら、藤本はヤマハとのオープン戦で浜松に凱旋することも夢見ている。
横山崇監督からの贈る言葉 「松井裕樹や鈴木翔太に負けない投手に育ってほしいです。できれば、大学卒業後にヤマハ経由でプロに行って、いずれはWBCに出てほしい。まだまだ伸びしろは大きく、大学で変化する可能性は高いと思います」 |
■藤本大輝[ふじもと・だいき]
投手/浜名3年/184cm80kg/右投右打
新津中では浜松市選抜のエースとして活躍。浜名高進学後、1年秋夏からベンチ入り。1年秋からエースとなり、大型右腕として注目を集めた。長身からの力あるストレートに緩いボールを制球よく配し、2年秋には常葉菊川と激闘を演じる。大学での飛躍が期待される逸材だ。
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背の高い人に聞くと、よく出てくる「よく寝る」という特徴。藤本も例外ではなく、子供の頃から早寝早起きで、夜更かしはせずにすぐ寝ていたそう。「さすがに最近は、11時半とか12時ぐらい…まで起きていることもあります」と、同世代に比べるとやっぱり早寝のようで、友達の家に泊る時なども、日付をまたぐ頃にはもう意識が薄れているとか。184センチの長身に、目力のある凛々しい顔立ちの藤本ですが、ちょっと可愛いエピソードでした。
あと、浜名では俊足好打の尾藤匠(浜松大進学予定)のご実家の絶品みかんをいただいてしまいました。ありがとうございます! 編集部でいただきましたが、大変美味しかったです!(編集部H)
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