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2013年12月

2013年12月31日 (火)

静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・下

 オフシーズン企画として始まった「静岡を巣立つ球児たち」。今年も編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
 前回に引き続き、藤本大輝(浜名3年)編です。 「静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・上」はコチラ

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静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・下

★万全で迎えられなかった夏
 3年生になった4月、春季西部大会の浜松商戦で藤本は肩に痛みを感じた。肩も上がらない状態に、病院に急行。疲労などが原因で肩周辺の筋肉を傷めているという診断が出た。一時期は歯ブラシも左手を使い、頭を洗うことすら苦労したという。
 手術で治る類のケガではなく、インナーマッスルを鍛えたり、病院に通ったりと地道なリハビリが続いた。ただ夏の大会まで時間がなく、痛みを感じても投げ込みをするしかない。少しずつ回復はしたものの、長いイニングを投げたのも夏の大会開幕直前、7月に入ってからだった。ヤマハ豊岡グランドで行われたこの練習試合を私も見に行ったが、前年秋とはかけ離れた状態に、ただ、無理をしないでほしいと願ったことを覚えている。それでも、藤本はこの試合で希望を見出していた。「ケガをしてから、あの試合で初めて長いイニングを投げました。全然いい球がいかなくて、ホームランも打たれて、散々な結果だったんですけど、長いイニングを投げれたってことは自信になりました」。最後の夏に向けて、藤本はやれるだけの努力はし尽した。Img_3125
 「1回戦(静岡農戦)は自分の思ったように投げれたんですけど、2回戦(静岡東戦)は投げてる途中に、痛みっていうか、疲労が出ました。一応完投はしたんですけど、自分で点数つけても30点ぐらいの出来だったんで、次の磐東戦、大丈夫かなって思いました」。不安の中で迎えた3回戦の磐田東戦は2-5で敗退。悔いが残る結果になった。

★東都5連覇中の亜細亜大へ!
 子供の頃からプロ野球選手が将来の夢で、高校卒業後も野球を続けるつもりだった藤本。しかし、2年生の春に東都の強豪・亜細亜大に声をかけられた時には、「最初は練習が厳しいって聞きますし、ちょっと…」と腰が引けていたそう。練習は嫌いではなかったが、亜細亜大のレベルになると不安があった。ただ、当時の亜細亜大エース・東浜巨(現ソフトバンク)の活躍には憧れも持っていたという。揺れていた藤本だが、「ケガをして自分の思った通りできない時期が続いたんで、そういう強いチームでやるのもありかなと思って」と、東都5連覇中の亜細亜大で自分を追い込むことを決めた。かっこいい縦縞のユニフォームを着てみたいという小さな夢も叶うことになった。

★制球力で勝負
 大学でアピールしていきたいところは制球力とストレートのキレ。「一番磨いてきたところ。球速よりも制球力を見てほしいですね。ピッチングに関してはかなり自信があるので」。縦に落ちるカーブで、打者の打ち気を反らしたり、緩急も活用している。「真っ直ぐだけだと、強いチームになってくるほど合ってくる。そういうのを防ぐためにも変化球を上手く使わないと。ストレート一本だと打たれると思うので」。
 制球力がある投手にしては珍しく、藤本のフォームは荒削り。今までは思うようにやらせてもらい、厳しく指導をされることはなかったという。尊敬する前田健太(広島)のようにバランスのいいフォームになっていくのか、藤本の個性がさらに出てくるのか、大学ではフォームの進化も楽しみにしたい。

Alim0308★現役球児へのメッセージ
 最後に現役球児たちへ伝えたいことを尋ねた。「高校野球っていうのは人生で一回しか味わえないんで、やっぱり僕みたいにあれやっとけばよかったなと思わないようにやってほしいと思います。やっぱり努力した方が絶対いい。努力すれば最後に評価っていうか、勝てるようになるんじゃないかと思うんですけど」。まるで、自分の努力が足りなかったかのように言った藤本だが、高校入学前に70キロ以下だった体重も現在は80キロあり、体作りは着実に進んだ。それでも、「下半身のトレーニングをもう少しやっておけばよかった。ケガをしない体づくりをしておけば野球人生変わっていたんじゃないかなと思うんですけど…」と貪欲な姿勢を見せる。
 現在、肩の痛みはなくなり、あとは実戦感覚を取り戻すだけ。大学1年での目標に挙げたのは、「まだ肩をケガして実戦で投げていないので、どれだけできるかまだわからないんですけど、やるからにはベンチ入り」。無理はしないように、と自分に言い聞かせながら、藤本はヤマハとのオープン戦で浜松に凱旋することも夢見ている。

横山崇監督からの贈る言葉
「松井裕樹や鈴木翔太に負けない投手に育ってほしいです。できれば、大学卒業後にヤマハ経由でプロに行って、いずれはWBCに出てほしい。まだまだ伸びしろは大きく、大学で変化する可能性は高いと思います」

■藤本大輝[ふじもと・だいき]
投手/浜名3年/184cm80kg/右投右打
新津中では浜松市選抜のエースとして活躍。浜名高進学後、1年秋夏からベンチ入り。1年秋からエースとなり、大型右腕として注目を集めた。長身からの力あるストレートに緩いボールを制球よく配し、2年秋には常葉菊川と激闘を演じる。大学での飛躍が期待される逸材だ。
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 背の高い人に聞くと、よく出てくる「よく寝る」という特徴。藤本も例外ではなく、子供の頃から早寝早起きで、夜更かしはせずにすぐ寝ていたそう。「さすがに最近は、11時半とか12時ぐらい…まで起きていることもあります」と、同世代に比べるとやっぱり早寝のようで、友達の家に泊る時なども、日付をまたぐ頃にはもう意識が薄れているとか。184センチの長身に、目力のある凛々しい顔立ちの藤本ですが、ちょっと可愛いエピソードでした。
 あと、浜名では俊足好打の尾藤匠(浜松大進学予定)のご実家の絶品みかんをいただいてしまいました。ありがとうございます! 編集部でいただきましたが、大変美味しかったです!(編集部H)

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2013年12月26日 (木)

早稲田大の勝又健太、川原孝太、中澤彰太に会ってきました!

 先週末から26日まで藤枝で早稲田大がキャンプを行いました。早稲田大といえば、静岡県出身選手も多いチーム。貴重な機会を逃すまじと、「静岡高校野球」編集部も藤枝へ急行しました。
Katsumata 今回話を聞かせてもらったのは、静岡の高校出身の3選手。まずは沼津東出身の3年生捕手・勝又健太から紹介したいと思います。沼津東といえば、「静岡高校野球2013-2014冬特別号」でも文武両道校として紹介した通り、県内でも屈指の進学校。勝又も難関の一般入試をくぐりぬけて、早稲田大に入学しました。高校時代にドラフト候補だったような選手が多く集まる早稲田大野球部の競争にくらいつき、今年の春・秋にはベンチ入り。ブルペンキャチャーとしてチームを支えました。現在は学生コーチも兼ねながら、最終学年でリーグ戦出場を目指す勝又にインタビューしました。

――どうして早稲田大を選んだんですか?
「高校に入った時から大学でやりたかったんです。レベルの高いところでやってみたいという希望がありました。その中でも、早稲田の野球部は一般入試からでも誰でも入部できるので、勉強をした上で野球をやるにはいいなと思いました」
Dsc_3484――早稲田の野球部はハイレベル。苦労も多かったのでは?
「高校では中心選手で、下積みがなかったから早稲田ではやっぱり苦労しました。技術もそれなりにやっているつもりでしたが、パワーも細かい技術もなかった。でも、最後までやり通そうという気持ちでしたね」
――そんな中でも、アピールしていきたい部分は?
「自信があるのは肩の強さです。でも、まだ正確性がないので、そこをこの冬鍛えていけたら。フットワークやキャッチングも磨いて肩を生かしていきたいです。キャッチャーが少ないので、長所を磨いて、短所をレベルアップして、リーグ戦に出場したいですね」
――キャッチャーとして受けて、印象に残っている投手はいますか?
「やっぱり有原(航平・3年)は球も速いし、コントロールもいい。変化球も多彩ですごいと思います。楽天に指名された横山さん(貴明・4年)もよくブルペンで受けさせてもらいました」
――卒業後の進路は?
「教員志望です。高校に入った時からそういう思いがありました。いつか、指導者として母校を甲子園に出せたら」

 最後に写真撮影をお願いすると、「慣れていないので…」と少し照れていた勝又。練習時間が短く、勉強も忙しい母校・沼津東の話題を振ると、「沼津東が他の高校に勝つには頭を使って、考える野球をやらないといけません」と後輩たちにメッセージ。早稲田でやり抜いて、静岡に教員として戻ってきてくれる日を待ってます!

 
 そして、新人戦後にも紹介したこの2人、掛川西出身の2年生・川原孝太と静岡高出身の1年生・中澤彰太新人戦で早稲田大の静岡出身選手をチェック!)。

Nakazawakawahara 川原は早稲田に行きたいとずっと思っていたわけではないとか。「佐藤先生(光・監督)と話して、“お前なら挑戦する価値がある”と言っていただいたので。大学でも野球はやるつもりだったので、挑戦してみようと。入ってからは戸惑いよりは単純にすごいな、勉強できるな、と思いました。今までと比にならないレベルでやっていたので。学ぶところがたくさんありました」。掛川西時代は遊撃手として鳴らしましたが、現在は二塁手。今回のキャンプでは二塁手出身の岡村猛監督とマンツーマンで特守に励むなど二塁手としての動きを基礎から叩き込まれています。「課題を一個一個クリアできるよう、やれることを精一杯やるのに一生懸命でした。中村さん(奨吾・3年)といういいお手本もいましたし。結果、ベンチに入れましたが、入ったり外れたりで出場機会がなかったので、使ってもらったら一発でアピールできるように準備しています」。岡村監督も「思考力がある」と評価する川原。この冬の成長に期待したいです。

 中澤は1年春からスタメンに抜擢され、岡村監督が「将来の中心選手に」と期待するほど。「今年1年、いい経験ができました。春は悔しかったり、辛い思いもしたけど、秋にはやっていけるなと自信がつきました」と言う通り、今秋は本塁打を記録し、そのままレギュラーに定着。「今後は全体的にレベルアップしたいですが、特にバッティングを頑張りたい。新チームになってから3番を任せられたので、技術よりもチャンスや勝負どころで打っていきたいです」。来年のドラフト候補・中村とは一緒に自主練もしているそうで、「自分もラストシーズンのつもりで頑張りますと中村さんには言っています」と、偉大な先輩とのラストイヤーに向けて気合は十分です。

 1年~3年まで静岡の高校出身の選手がいる早稲田大(静岡出身で言えば、もっといます!)。勝又が「静岡県民で早稲田を盛り上げられたら」と頼もしいことを言っていたので、来年も注目していきたいです!(「静岡高校野球」編集部)

<写真上・中/勝又健太>
<写真下/川原孝太(左)と中澤彰太(右)>

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2013年12月25日 (水)

静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・上

 昨年の人気連載(自称)が今年も帰ってきました! 微妙に改題して、「静岡を巣立つ球児たち」となりましたが、内容は変わりません。編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
 今回登場してもらうのは浜名の本格派右腕・藤本大輝。卒業後は亜細亜大に進学する藤本のインタビューを2回にわたってお届けします。

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静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・上

★主に遊撃手だった少年時代
 藤本大輝には幼稚園の頃からキャッチボールをしていた記憶がある。それもそのはず、藤本の父・豊樹さんはヤマハで内野手としてプレーした選手で、長男として生まれた藤本には小さな頃からボールを握らせていたという。しかし、藤本の自宅の近所には少年野球チームがなく、最初はソフトボールのチームに入団。豊樹さんはほぼ毎試合藤本の試合に足を運び、家に帰れば庭でティーバッティングに付き合ったり、色々指導してくれた。
Fujmoto2 小学6年の時に、近所に少年野球チームができ、藤本は1年間野球を経験してから新津中に入学した。その頃のポジションは主に遊撃手。「少年野球でもショートをやって、2試合目に投げるというかんじでした。中学でも1試合目にショートやって、2試合目にピッチャーというのが何回かあって、本格的にピッチャーをやったっていうのは、自分たちの代になってから。中2の秋からかと思います」。中3で浜松市選抜のエースを張った好投手にしては、ずいぶん遅いスタートだった。ただ、「自分たちの上の代に根木さん(琢也・浜松南→大阪体育大)がいて、ずっとエースだったので」と藤本が言うように、当時の新津中はタレントが揃っていた。浜松南でも好投手として鳴らした根木はもちろん、藤本の下の代には、服部航平(浜松西2年)、中川雄太(浜松南2年)ら、高校で2年生からエースを務めるほどの選手たちがいた。

★縁がつないだ浜名進学
 藤本の高校選びはあっさり決まったという。「浜名の西川公紹コーチもヤマハの方で、父が親しくさせてもらってたり、よく喋ったりもさせてもらっていて、そういう信頼関係があったのと、浜松市選抜のメンバーがみんな浜名に行くっていうのも聞いて、それなら僕もっていうのがありました」。浜松市内には元ヤマハ選手が外部コーチとして指導している高校が多い。その中でも、西川コーチと豊樹さんは同郷で同じ高校出身ということもあり、特に親しくしていたそう。
 浜松市選抜のエースとして周囲に期待されて入学した藤本だったが、最初は環境に馴染むことに苦労した。全体練習の後に自主練習があり、1年生たちは当然最後まで残ることになる。学校のすぐ横を走る遠州鉄道の終電に乗ることもしばしばあったという。礼儀正しい藤本にとって、投球練習で3年生捕手に受けてもらうことにも緊張した。「その時、気を遣って投げていたおかげで、制球は良くなりましたね」と今は笑って振り返るが、当時は必死だった。
 それでも、1年夏にはベンチ入りを果たし、1年秋には1番を背負って、秋季西部大会・小笠戦で完封デビュー。180センチを超える本格派右腕として藤本の知名度も少しずつ上がっていった。

★悔しかった常葉菊川戦、納得できた北照戦
 そんな中で注目を集めたのは2年秋の西部大会・常葉菊川戦だった。常葉菊川にとって、負ければ県大会出場がなくなる5位決定戦。浜名も後がないのはもちろんだったが、1年前にも西部大会で常葉菊川に2-1で負けていた藤本はそのリベンジをしたいという気持ちが強かった。
Fujimoto 先発した藤本はダイナミックなフォームから力のあるストレートを投げ込み、好投を見せた。試合は3ー3のまま延長に突入し、浜名は何度となくサヨナラのチャンスを迎えながら、延長15回引き分けで終了。翌日行われた再試合では藤本が打ち込まれ、浜名は敗退した。「1試合目は動けてたんですけど、やっぱり15回200球近く投げて、次の日は足も肩もパンパンで、ピッチングするのがすごい辛かったです。今でも監督さんがミーティングであの試合のことを例にして言うぐらい、チーム全体で悔しい思いをしました」。
 その悔しさを糧にトレーニングに励んだ冬は充実していた。そして迎えた3月、藤本が楽しみにしていた練習試合があった。相手はセンバツ出場を控えていた北照。吉田雄人(オリックス5位)、小畑尋規、土門愛大らプロからも注目されていた好打者たちを抑えることを目標に、調整に取り組んでいたという。強豪に挑んだ結果は9回2失点。打たれた安打は5、6本で長打はなかった。チームも3-2で勝利を収め、「あの時は自分でも納得するピッチングで勝てました」と藤本自身満足できたベストピッチだった。
 この2試合が藤本が高校時代に最も印象に残った試合だという。万全の状態で3年春、夏を投げきれれば、もしかしたら、さらに印象に残る試合もあったのかもしれない。しかし、3年生になった藤本を待っていたのはケガとの戦いだった。

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「静岡を巣立つ球児たち2013~藤本大輝編・下」は近日公開予定です。(編集部H) 

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2013年12月22日 (日)

静岡高の食事合宿に迫る!

12201__2 今日は、年末年始、野球のないこの時期にオススメしたい1冊の本を紹介したいと思います。先日発売された甲子園の強豪校はこんなごはんを食べていた! 強くなるための「食育」カルテ』(オークラ出版)というムック本です。
 今回、その中で僕は静岡高について、原稿を執筆しました。ここ数年、静岡高の体格の良さは、他県の強豪校と比較しても、見劣りしないどころか、全国トップクラスではないかと思っていました。体をつくる源となる食事。以前、「食事合宿を行っている」と聞いたことがあり、その内容にすごく興味を持っていました。
 今回は、静岡高の他に、帝京、浦和学院、龍谷大平安、豊川、山梨学院大附などが、「食」へのこだわりを披露しています。指導者、現役球児はもちろん、高校野球ファンも楽しめる内容になっているので、ぜひ本屋さんなどで手に取ってほしいです。(編集部・栗山)

★amazonからも購入できます→http://www.amazon.co.jp/%E7%94%B2%E5%AD%90%E5%9C%92%E3%81%AE%E5%BC%B7%E8%B1%AA%E6%A0%A1%E3%81%AF%E3%81%93%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%94%E3%81%AF%E3%82%93%E3%82%92%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%9F-%E5%BC%B7%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE%E3%80%8C%E9%A3%9F%E8%82%B2%E3%80%8D%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%86-OAK-MOOK/dp/4775521829  

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2013年12月19日 (木)

静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・下

 オフシーズン企画として始まった「静岡を巣立つ球児たち」。今年も編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
 前回に引き続き、鈴木亮(静岡3年)編です。 「静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・上」はコチラ

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静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・下

★浮上のきっかけは仲間との絆
 高校生活で一番嬉しかったことを尋ねた時、鈴木はしばらく悩んだ。「自分的には悔しい3年間だった」という鈴木が、嬉しかったことにあげたのは、「仲間ができたこと」だった。「3年間、みんなで苦しい、悔しい思いした中で最後まで一緒にやれたってことが、一番いいことだったと思います」。
 鈴木が「どん底」から抜け出すきっかけになったのも仲間の存在が大きかった。不安だらけで迎えた夏の大会直前に、「もうみんなに任せよう、頼ろうって。自分だけじゃないと思ったんで」、ようやく鈴木は開き直れた。人に頼るのが好きではなく、責任感の強い鈴木だが、仲間への信頼感がようやく自分の弱みをさらけ出せたのかもしれない。
 今夏、納得できる投球はできず、準決勝で敗戦の瞬間までマウンドに立ち続けたのも水野だった。悔しい気持ちはもちろんあったが、気持ちは上向きになれた夏だった。

1312191_4★進学先は戦国東都・専修大
 
大学でも野球を続けることは決めていた鈴木だったが、第一志望だった大学とは縁がなかった。しかし、そこで声をかけてくれたのが専修大だった。鈴木の希望していた東都リーグの大学で、ましてや大学側から欲しいと言ってくれている。「呼んでくれる大学でプレーできるなんて野球人としてこんな嬉しいこともないぞ」と栗林俊輔監督にも言われ、鈴木は迷わず専修大進学を決めた。
 「声をかけてくれた恩返しってわけじゃないですけど、ちゃんとやらないといけないなって」。入学1年目での目標は、1年生の中で一番いい成績を残すこと。まずはベンチ入りを目標として挙げたが、小さな目標を一つずつクリアしていって、最終的には専修大のエースになるということを目標にしたいという。
 2月の練習合流時点から全力でアピールするために、鈴木は三島市から通学しながら練習にも力を入れている。下半身強化と柔軟性アップを課題に挙げ、自宅でもストレッチをこなす。

★松井裕樹との対戦
 鈴木は高校野球で印象に残った試合に、今春行われた桐光学園との練習試合を挙げた。試合というよりは、松井裕樹(桐光学園→楽天)の存在が大きかった。鈴木は伊豆市シニア時代、関東大会で青葉緑東シニアの松井と投げ合ったことがある。鈴木が勝利を収めたものの、「とにかく変化球のキレが違いました。曲り幅とかもすごかったし」と、記憶には深く刻まれた。
 その松井を再び見たのは、昨春の練習試合だった。抑え込まれることが少ない静岡高打線が簡単にアウトを重ねていく様子に鈴木はベンチで舌を巻いた。そして、今春、再び練習試合で桐光学園と対戦。鈴木は肉離れが完治していなかったが、登板を直訴。2度目の投げ合いが実現した。3回ぐらいまでと言われていた松井も、シニア時代に負けている鈴木への対抗心からか9回を投げ切った。ノーヒットノーラン寸前に抑え込まれた静岡高だったが、鈴木も持ち味を出して完封。0-0の引き分けだった。「これがナンバーワンなんだって感じさせられた試合でした。雰囲気も他の注目されてる投手と違いましたし、キレとかリリースの音も全然違いました。DH制だったので打席には入ってないんですけど、みんなが“ヤバイ”とか“消える”とかいう球を打席で見てみたかったですね」。

Ryo

★鈴木亮からのメッセージ
 現役球児へのメッセージを聞くと、「自分が言うのも何なんですけど、悔いなくやってほしいです。この仲間とやるっていうのも一つの縁だと思う。勝っても負けても、一生付き合っていく仲なので、仲間を大切にやっていってほしいと思います」。鈴木は柔軟性をもっと上げていれば、ケガもしなかったんじゃないか、もっといい投球ができたんじゃないかと練習に対しての悔いもあるという。とはいえ、「やりきったって思っちゃったら、ここまでやる気もなかったと思います。こういう終わり方をしてよかったってわけじゃないですけど、悔しい終わり方したからこそ大学でもっと頑張ろうって思いますし」と、高校生活での悔しさ、挫折、溜め込んだ鬱憤を無駄にする気はない。
 5月に『静岡高校野球2013』の取材で将来の夢を尋ねた時には、「まだわからない」と言っていたが、今回は「プロを第一目標に、まずは専修大で活躍して、社会人などから声がかかるようにしたいです」と教えてくれた。その表情も、5月よりはずっと明るい。「「どん底」にいたことを鈴木はすでに糧として、上昇し始めていると感じた。

栗林俊輔監督からの贈る言葉
夏の大会で苦しいところを背負うのは水野じゃなくて、全部お前だと本人にも何度も言ってきました。鈴木は勝負の場面での強さや運を持ってるし、そういう星の下に生まれたと思う。高校は悔しい思いで終えたので、それを原動力に大学で頑張ってほしいです。この高校生活を鈴木はもちろん、水野も今後の野球人生に生かしていってほしいですね。

■鈴木亮[すずき・りょう]
投手/静岡3年/175cm75kg/左投左打
伊豆市シニアでは1年秋からエース。静岡高進学後、1年秋からベンチ入り。2年秋には打たせて取る投球と、定評ある打撃で県優勝の立役者に。走者を出しても粘れる精神力と、試合を作る能力に長けた左腕。
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 ツイッターでも書きましたが、人見知りだという鈴木。話すのは2回目ですが、今回はだいぶ打ち解けられた気がしました。しかし、「あと2、3回会えばもう少し打ち解けられるかも…」とのこと。来年はまめに専修大を見に行こうと思いました。
 静岡高の卒業生は小川拓真(中央大)や中澤彰太(早稲田大)など、下級生時から実力を発揮してくれる選手が多いので、今年の3年生たちも頑張ってほしいですね!(編集部H)
 

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2013年12月16日 (月)

静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・上

 昨年の人気連載(自称)が今年も帰ってきました! 微妙に改題して、「静岡を巣立つ球児たち」となりましたが、内容は変わりません。編集部Hが、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
 2013年一発目は静岡高の左腕・鈴木亮。卒業後は専修大に進学する鈴木のインタビューを2回にわたってお届けします。

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静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・上

★伊豆市シニア旋風の中心
 鈴木亮が野球を始めたのは3歳上の兄が三島向山アローズに入団したことがきっかけだった。チームの練習などを見に行くうちに、ほどなくして同じチームに入ったのは6歳の頃だったそう。中学からは監督が父の高校時代の監督だったという縁もあり、伊豆市シニアに所属。鈴木が4期生という、まだ新しいチームにおいて、鈴木は1年秋からエースとなった。鈴木の同期には、遠藤康平(常葉菊川)、森下開地(酒田南)ら、のちに強豪校で主力となった選手が揃っていたが、鈴木は打撃でもクリーンナップを担い、投打に伊豆市シニアを引っ張った。
 もちろん、それだけ粒揃いだった伊豆市シニアはチームとしても強かった。関東大会に初出場し、九州選抜大会では優勝。関東のレベルの高さを肌身で感じた鈴木は、進学先を決める際、関東の高校が頭をよぎったこともあるという。しかし、監督の勧めや、伝統や甲子園を狙える学校だということに鈴木自身惹かれていたこともあり、静岡高に進学することを決めた。

01_3★高校生活がスタート
 静岡高に進学した選手の大半の第一印象は「先輩の体がでかい」。鈴木も例外ではなかった。「中学までは細くても身長があればオーラがあるとかそういうかんじで。でも高校来て、ただ身長があるだけじゃ何も思わなくなりました。入った時に3年生だった高階さん(隼・現中央大)とかは体に厚みがあって。そこでもう圧倒されたというか」。
 三島に住んでいる鈴木は入学と同時に下宿生活もスタートした。圧倒された体格の先輩たちとの生活、厳しい高校野球の練習と、野球漬けの毎日に、1年生の頃は1日を長く感じるほど。「気持ちが強い」と栗林俊輔監督が太鼓判を押す鈴木でも、その頃は実家に帰って羽を伸ばす度に、「戻りたくないな」と考えてしまったそう。

★水野匡貴の存在
 それでも1年秋にはベンチ入りを果たし、2年からは登板機会も増えた。2年秋には背番号1を背負い、エースとして県優勝の立役者に。覚えたばかりだったツーシームが冴え、打たせて取る投球に磨きがかかった。さぞ順調で楽しい野球生活だっただろうと思いきや、鈴木は「悔しいことばかりでした」と振り返る。「1年秋にベンチに入ったって言っても、試合も出てないですし、結果も出てない。やっぱり、試合に出て、活躍してこそ。2年秋も水野(匡貴)がケガをして、それで自分がチャンスをもらってものにしただけで、水野の上にいったってわけじゃなかったんで」。
Suzuki02_3  入学時から大きな期待を受け、早い段階から注目を集めていた水野を、鈴木はずっと意識していた。「周りから見たら、“やっぱり水野だろ”っていうのもあったと思います。水野が能力的にも高いっていうのはわかってたんですけど、自分もこの高校に来たからにはエースになりたいって気持ちもありましたし」。長身で本格派右腕の水野と、安打は浴びても粘って勝つ投球スタイルが売りの鈴木では、左右もタイプもまるで違う。それでも、鈴木には負けたくない相手だった。「でも、ライバルだからって口をきかないとかそういうことはないですよ。変化球のこととか話し合ったりしますし。水野の方は別に、意識してないかも」と鈴木は少し笑う。

★鈴木の見た「どん底」
 2年秋の結果にも満足はしなかった鈴木はその冬のトレーニングにも余念がなかった。万全の状態の水野と競って、1番を勝ち取りたかった。だから、春になり練習試合の解禁日に肉離れを起こした時には、「最初の頃は隠そうと思ってたんですけど、やっぱり無理でした。そこから練習も全然できないですし」と落ち込んだ。
 その春、水野の評価はうなぎのぼりだった。プロ注目だと騒がれ、春の県大会では1番を背負った。対する鈴木はケガが治って、復帰しても感覚が取り戻せない。思うような投球ができず、試合を壊すこともあった。「自分を見失っていたというか。自分のピッチングスタイルも忘れて、何をやってるのかわからなかったですし。自分的にもどん底いっちゃいましたね。自分、何やってるのかなって色々考えたり。チームにも迷惑をかけたし…」。
 昨秋、安定感ある投球で静岡高を県優勝に導いた鈴木はそこにいなかった。不甲斐なさにもがき続ける日々だった。「自分、不安とかそういうことを周りに言えずに考えこんじゃうタイプで。それで自分をだめにしたってかんじですかね。自分の性格を知ってる分、周りもアドバイスしづらかったというか。監督やコーチは“お前らしさがあるぞ”とか“それでいいぞ”って声かけてくれてたんですけど、らしさって何なんだろう、本当にこれでいいのかって。苦しい時期でした」。内に秘めた闘志や意志、負けん気の強さは鈴木の一番の力で、魅力でもある。けれど、この時は、その強い気持ちが悪い方向に作用してしまったのかもしれない。鈴木の「どん底」は長かった。

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「静岡を巣立つ球児たち2013~鈴木亮編・下」は近日公開予定です。(編集部H) 

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2013年12月15日 (日)

鈴木翔太(聖隷クリストファー)の激励会が開催されました!

 昨日は、中日ドラフト1位の鈴木翔太(聖隷クリストファー)の激励会に伺ってきました。
 浜松リトルシニア主催のこの会には、シニア関係者、高校野球関係者、現役の小中学生など約500人が集まり、盛大に開催されました。

 会の最後では、恩師・佐野勝稔監督(浜松リトルシニア)に向けて、手紙を読み上げた鈴木。「中学3年春、故障しながら我慢して投げて敗戦したあと、『投げないこともチームのためなんだよ』と教えてくれました。その後1カ月半、『エースは翔太だ』と練習試合を入れず、待っていてくれたことが本当に嬉しかった」というエピソードを披露しました。

 出席した浜松リトルシニア出身の後藤武敏(現横浜DeNA)からは、「スカウトから、いいピッチャーだと聞いていました。プロの世界は甘くないですが、いつか対戦できるよう、お互い頑張りましょう」とエールが送られました。12141_3

 鈴木vs後藤。プロの舞台で「浜松リトルシニア対決」が実現するのか。そのために、ぜひ鈴木には本人が目標とする1年目後半での1軍登板を成し遂げて欲しいと思います。 (編集部・栗山)

※鈴木翔太については、現在発売中の『野球太郎No.007 2013ドラフト総決算&2014大展望号 』で4ページに渡って原稿を執筆しました。今回は、僕が鈴木を2年半見続けた集大成的な記事になっています。→http://www.amazon.co.jp/gp/product/4331802485/ref=pd_lpo_k2_dp_sr_1?pf_rd_p=466449256&pf_rd_s=lpo-top-stripe&pf_rd_t=201&pf_rd_i=4331802469&pf_rd_m=AN1VRQENFRJN5&pf_rd_r=1G8PWBD67B49YC7Y81Z0

<写真/同じ浜松リトルシニア出身の後藤武敏(写真左)から「夢は大きく持った方がいい」とアドバイスをもらう鈴木翔太(写真右)>

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2013年12月10日 (火)

「静岡高校野球2013-2014冬特別号」が発売されました!&訂正(付け足し)

 本日10日、「静岡高校野球2013-2014冬特別号」が発売されました。この長いタイトルは、編集部内で2013年の年末号にしたい派と2014年新春号にしたい派が割れて、収拾がつかなくなったので、合体させたためです。

 早速ですが、購入者の方に訂正というか付け足しのお知らせです。「2014年静岡注目選手名鑑」の全国編(ページ数はないですが、7ページです)で上段3人の出身校が入ってません。申し訳ありません。
 有名どころなので、ご存知の方も多いと思いますが、

野村亮介→静清高出身
栁龍一→浜松商高出身
阿部智弘→磐田東高出身

 です。

(「静岡高校野球」編集部)

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2013年12月 5日 (木)

訂正 静岡高校野球2013-2014冬特別号は12月10日発売です!&内容のお知らせ

 申し訳ありません! 昨日、『静岡高校野球2013-2014冬特別号』の発売日を12月11日発売とお知らせしましたが、10日の間違いでした。10日には是非書店に足を運んで下さい。編集部でも発売日にはついつい書店に行ってしまいます。目の前で本を買ってくれる方を目撃した時の喜びは言い表せません。

 今回、目次がないので、こちらで内容を紹介します。

2014年静岡注目選手名鑑&桒原樹(常葉菊川)インタビュー
~高校生はもちろん、中学生から大学生、社会人、軟式、県外で活躍している静岡関連選手まで紹介!(高校3年生は進路がまだはっきりしなかったこともあり、載せていません。『静岡高校野球2013』をぜひチェックしてください)

県外出身選手の挑戦
馬渕晃汰(富士市立)・岸山智大(静岡)・齋藤誠哉(磐田東)

文武両道のすすめ
沼津東・清水東・浜松北

静岡野球瓦版
野村亮介(三菱重工横浜)緊急インタビュー
第1回静岡県中学生硬式野球選手権大会レポート
岡田千詠子先生のトレーニングQ&A

2013年静岡ベストナイン

 以上です。私、編集部Hがもったいぶって「何の取材かは後日…」と言っていた野村のインタビューは『静岡高校野球2013-2014冬特別号』用でした。ブログで紹介した話とはまた違った野村のインタビューになっているので、是非読んで下さい!
 ちなみに県外出身選手の挑戦は『静岡を巣立つ高校球児』と並行してブログでやろうと思っていた企画でした。本に奪われた(?)分、充実していると思うので、こちらも見逃せません。
 とにかく、静岡の野球ファンや現役プレーヤーには是非見てほしい本に仕上がったと思います。『静岡高校野球2013-2014冬特別号』をよろしくお願いします!(編集部H)

<販売問い合わせ>
しずおかオンライン
電話 054-275-3335/FAX 054-275-1301
http://www.esz.co.jp/

※今回、販売に関してはしずおかオンラインさんにお任せしています。編集部では取り扱い店舗などの問い合わせにはお答えできかねますので、よろしくお願いします。

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2013年12月 4日 (水)

静岡高校野球2013-2014冬特別号が12月10日に県内書店にて発売!

Shizuokakoukou

 秋頃から取材を進めていた『静岡高校野球2013-2014冬特別号』の発売日が12月10日に決まりました。冬号を作るのは初めてで、いつ頃発売できるかあやふやだったので、なかなか制作状況を発表できず、こそこそ作業をしていました。
 『静岡高校野球』と銘打っていますが、注目選手名鑑では中学生から大学、社会人、軟式、県外で頑張る静岡関連選手など何でもありなので、夏に出しているものよりも高校野球の濃度は低めです。
 今回はたった16ページで目次も省略。価格は200円です。amazonの委託販売では取り扱ってもらえない金額なので、県内書店限定の発売になりました。なお、販売に関してのお問い合わせは下記のしずおかオンラインさんまでお願いします。

 印刷に出してから気づいたのですが、表紙の選手が誰なのかどこにも書いていませんでした。すみません! 静岡の野球好きならすぐに気づくと思いますが、常葉菊川のスラッガー・桒原樹です。今回の表紙は青くありませんが、桒原を目印に書店で探してみてください。
 冬号の需要が全く読めなかったので、低価格少ページですが、質は落としていないので、立ち読みで全部読むのは時間がかかると思います。ぜひこたつのお伴に!(『静岡高校野球』編集部)

<販売問い合わせ>
しずおかオンライン
電話 054-275-3335/FAX 054-275-1301
http://www.esz.co.jp/

※今回、販売に関してはしずおかオンラインさんにお任せしています。編集部では取り扱い店舗などの問い合わせにはお答えできかねますので、よろしくお願いします。

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2013年12月 1日 (日)

伊豆市リトルシニアのOBと現役チームが試合!

 今日は、伊豆市リトルシニアの現役チームとOBチームが交流試合を開催するということで、志太スタジアムに行ってきました。

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 今回の主なOBチームは中学3年夏に九州連盟創立30周年記念全国選抜野球大会で優勝した現高校3年生たちです。決勝戦では、松井裕樹(桐光学園)を擁する青葉緑東リトルシニアを破っての快挙でした。

 そんな選手たちが約3年ぶりに、自チームのユニフォームを身にまとい、出身チームに戻ってきました。
 甲子園に出場した森下開地(酒田南)、遠藤康平(常葉菊川)、静岡高で左のエースとして活躍した鈴木亮など、各チームの中心選手ばかり。「もし、この選手たちが同じ高校に進んでいたら、どんなドリームチームが出来上がっていたんだろう」と今日の先発メンバーを聞き、思わず想像を膨らめてしまうような、凄い選手ばかりでした。

 一方、現役チームの注目は、何といっても4番ファーストで出場した水口弥。この夏はシニア日本代表に選出され、全米選手権でも活躍した逸材です。

 試合は初回、OBチームが弥の兄・水口潤哉(静岡商)の絶妙なセーフティバントを皮切りに、打者一巡の猛攻で6点を先制。2回にも、4点を挙げて先輩の凄さを見せつけます。やはり、打球のスピードが違います。投げては、先発・鈴木のボールに後輩たちのベンチから「速っ」と声が上がるほど。序盤は、ボールに当てるのがやっとという感じでした。
 そんな中、体格は先輩たちとまったく見劣りしなかったのが現役チームの水口です。ところが、水口でも、初回の第1打席はストレート、変化球、変化球で空振り三振に倒れます。おそらく、今まで感じことのないレベルのキレだったと思います。それでも、第2打席にはポテンヒット気味ですが、ライト前安打を放ったのはさすが。パワーで持っていきました。

 投げ終わったあと鈴木は「今日がガチでいきました。久しぶりに投げたのでちょっと体がキレてなかったのですが…。でも、水口君はいい選手だと聞いていたので、打たれないように意識しました」と話してくれました。

 一方の水口は「第1打席は最後まっすぐが来ると思って狙っていましたが。確かにキレが凄かったです」と振り返ってくれました。

 その他、遠藤が前の打球をダッシュして捕り、ジャンピングスローで打者走者をアウトにすれば、森下がセンターからホームへダイレクトスローのレーザービーム、強打の花島瑞貴(伊豆中央)はレフトへ強烈なライナー性の打球を…。今日の1試合で終わるのは本当にもったいない豪華なOBチーム。すごく贅沢な試合を堪能することができました。(編集部・栗山)

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■OBチームの先発メンバー
1番 左翼 水口潤哉(静岡商)
2番 二塁 遠藤嵩太(日大三島)
3番 中堅 森下開地(酒田南)
4番 遊撃 遠藤康平(常葉菊川)
5番 投手 鈴木亮(静岡高)
6番 三塁 勝又陽一(日大三島)
7番 一塁 山崎康輔(市立沼津)
8番 捕手 花島瑞貴(伊豆総合)
9番 右翼 伊藤圭耶(加藤学園)

<写真/上から2年秋にチームを県優勝に導いた鈴木亮(静岡高)、三拍子そろった好プレーヤーの森下開地(酒田南)、青山学院大に進学し4年後のプロ入りを目指す遠藤康平(常葉菊川)、今夏主将としてチームを引っ張りベスト4進出に貢献した谷田凌(富士市立)、大型スラッガーとして期待の水口弥(伊豆市リトルシニア)>

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