先日、『静岡高校野球2013』の取材で、流しのブルペンキャッチャーこと安倍昌彦さんと常葉学園橘のグランドにお邪魔しました。今回の企画は、3年ぶりに常葉学園橘の高橋遥人&青島勢奈の球を安倍さんが受けるというもので、その模様は6月中旬~下旬ぐらいに発売予定の『静岡高校野球2013』でお伝えします。
安倍さんが高橋と青島の球を受けた後、ブルペンにやってきたのは左腕・手嶋航平と右腕・勝山純之介。そうです、常葉学園橘中の3年生投手たちです。「期待の投手たちなので、ぜひ見てやってください」と常葉学園橘中の片平恭介新監督に言われて、安倍さんも私も2人の投球を見つめましたが…ちょっとびっくりしました。安倍さんが、「軟球投げてるんだよね? 硬球じゃないよね?」と確認するぐらい、重い音がブルペンに響いてたんです。
私は、手嶋は見るのは初めてではなく、去年から何度となく見ているのですが、印象が変わりました。今年の2月に見た時は、制球に苦しんでいる様子でしたが、その時よりもしっかりと腕が振れているのに、低めにビシビシ! 躍動感もあって、すごくイキイキした投手でした
勝山のプレーは見たことがなく、少年野球の先輩の渡邉隆太郎(富士重工業)の練習を見に来ていた時に姿を見たぐらいでした。守備位置すら知らなかったのですが、やたら迫力がある投手なんです。角度があり、強い球が突き刺さるようにミットに収まっていきます。「球が速いからピッチャーにした」と片平監督がおっしゃる通り、確かに速いですし、さらに制球が荒れ気味なのが非常に怖い。手嶋とはまるっきりタイプの違う投手です。
と、感心しながら、安倍さんとみていたのですが、安倍さんもだんだん興奮し始めて、「球筋を後ろから見たい」と、まずはブルペンのネット裏へ。ただ、そこは中学生で、ちょっと力んでしまっていましたね。と思っているうちに、安倍さんは再び防具を身にまとい、キャッチャー交代。手嶋、勝山と少し球を受けて、アドバイスも。
球を受けて、手嶋を、「黒澤学監督(高校)は、夏にこっそりベンチに入れたくなっちゃうんじゃないかな」と高評価した安倍さん。手嶋を絶対的エースだと思ったようですが、「春は小林宗弘っていう左腕が投げました。小林は小柄ですが手嶋より内外の出し入れが上手いんですよ」と黒澤監督に教えてもらい、目を剥いていました。
また、勝山については一目見た瞬間から、その手首の強さを指摘。スナップが効いているから球に強さがあるんですね。球を受けた後、安倍さんは勝山の後ろに立って、妙に長いアドバイスを送っていました。話は聞こえませんでしたが、何やら、変化球とフォームについてのアドバイスだったようです。手嶋ほどまとまっていない分、アドバイスの効きがいいようでした。
この一連の流れを、『静岡高校野球2013』の記事には載せられなかったので、ブログで紹介させてもらいました。安倍さんは、3年前に高橋・青島と一緒に受けた木村聡司や、大型1年生・小野寺拓海のことも気になっていたようです。
この取材は、常葉学園橘の練習が始まる16時半からということだったのですが、安倍さんが静岡駅に着いたのは、15時過ぎとちょっと早めの時間でした。今から向かうと早く着きすぎると知った安倍さん、どこかで時間をつぶそうと考えたようですが、最初に発した言葉は「静高ってまだ練習やってないよね?」。静岡高は15時45分ぐらいからということで、実現はしませんでしたが、ちょっとした時間も無駄にせず有望選手を探しに行こうとする安倍さんの根性に脱帽でした。(「静岡高校野球」編集部)
<写真上/昨年、小野寺拓海が抜けている時にエースを務めた手嶋航平(常葉学園橘中)>
<写真中/夏に向けて秘密兵器になるか? 勝山純之介(常葉学園橘中)>
<写真下/勝山に熱心にアドバイスを送る、流しのブルペンキャッチャーこと安倍昌彦さん>