静岡を巣立つ球児たち2015~河合毅弥編・下
オフシーズン企画「静岡を巣立つ球児たち」。今年も「静岡高校野球」編集部が、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
前回に引き続き、河合毅弥(聖隷クリストファー3年)編です。 「静岡を巣立つ球児たち2015~河合毅弥編・上」はコチラ!
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★名伯楽・小倉氏の助言
2014年10月、元横浜部長の小倉清一郎氏が1週間、聖隷クリストファーの臨時コーチを務めた。
小倉氏は中継プレーの練習を行う中で、「チームで一番肩の強い選手にキャッチャーをやらせてみたらどうか」と植竹和人監督と佐野大輔部長に助言した。
チームで一番肩の強い選手――。
河合しか見当たらなかった。
「最初に言われた時は、正直なんで自分がキャッチャーをやらなければいけないんだって思いました」 河合の野球人生を振り返って、捕手を経験したことは一度もない。
それでも最初はショートとキャッチャーの兼任ということで、少しずつ練習を始めた。
「捕るのが凄く怖くて。普通のボールは捕れるんですが、ショートバウンドとか、前でワンバウンドするボールに全然対応できなくて。マシンの速いボールで練習しましたが、すごく苦痛でした…」
2年冬は「チームのために」と割り切り、ひたすらキャッチャーの練習に取り組んだ。
★キャッチャー河合の葛藤
もともと、捕ってから投げるまでの速さには自信があった。春になり、実際のゲームで河合がマスクをかぶると、チームが引き締まった。河合の肩を見たら、簡単に走ってこないし、配球面もそつなくこなした。
それでも、やはりショートへのこだわりを捨てきれず、葛藤があったという。
「春の大会までは嫌々やっていて、態度にも出ちゃっていたと思うんです。バッティングにも影響が出ちゃって。打順が7番とか8番とかに落ちてしまったこともありましたし…」
春の西部大会では2回戦で浜松学院に2対3で敗戦。あらためて、キャッチャーの難しさを身をもって感じた。
「練習試合ならいいんですが、球場で試合をやった時に、ネットまでの距離が広くて、怖くて。後ろに逸らしたらどうしようって。浜松学院との時は接戦でしたので、すごく恐怖感がありました」
<ショートに戻りたい。でも、今のチームを考えたら…>
夏まで残り数か月。河合は悩んだ。そんな時だった。あらためて佐野部長から「チームのためにお前がキャッチャーをやるしかないんだよ。この経験が絶対生きるから」と説かれた。
「もうやるしかない」
そう踏ん切りをつけると、チームの状態が徐々に上がっていった。
★夏の快進撃
迎えた夏、秋春ともに県大会を逃した聖隷クリストファーが快進撃を見せる。
初戦は焼津水産に7対0で快勝。2回戦はサヨナラで静岡市立を下すと、3回戦は清水東に10対5で勝利。河合も計3試合で6安打5打点と絶好調だった。
4回戦の相手はシード校の常葉橘だった。序盤に常葉橘に大量リードを奪われるも、聖隷クリストファーは終盤に粘りを見せ、最後はあと1点まで追い詰めた。9対10で敗れたものの、試合後の河合は「3年間で一番満足できた大会だった」と充実感が漂っていた。
「負けましたが、やることはできたのかなって。あの時はベンチを含めた全員が一緒に戦っていたので、やっていて楽しかったです」。
この夏、河合は一つ、心がけていたことがあった。自身が1年夏、常に気を配ってくれた鈴木翔太(現中日)のように、今度は自分が後輩たちに声をかけた。
そして、キャッチャーを経験して良かったと思えるようになった。
「なかなか、誰もができないことをやらせてもらって。周りが見えるようになったのは今後に凄く生きてくると思います」
河合は首都大学リーグに所属する明治学院大に進学する。
明治学院大は現在2部だが、昨秋は優勝した明星大と同じ9勝3敗(優勝決定戦で敗れたため2位)という好成績を残した。1部昇格まであと一歩のチームだ。
「大学の練習会に行って上手い人が多かったんですけど、1年からレギュラーを取れるように、まずは守備をアピールしたいです」
大学はあくまで内野手として勝負すると決めている。
★河合毅弥からのメッセージ
最後に現役球児へのメッセージを聞いた。
「振り返ると、2年半は早かったです。今は練習とかきついと思いますが、あっという間ですので、今できることを全力でやって下さい。僕は楽をせず、苦しい道を選べば、必ず力がついて結果がでると信じています」
1年夏の鮮烈デビューから始まり、不振、キャッチャー転向、3年夏の活躍…。必ずしも順調ではなかった苦しい経験を新たな舞台で生かす。
植竹和人監督からの贈る言葉 チーム事情もあり、2年冬からキャッチャーをやらせました。捕ってから投げるまでの速さは、高校トップクラスだと感じたくらい、いいものを持っています。この3年間で人間的にも大きく成長してくれました。大学では内野手として、もうワンランク、レベルを上げて社会人やプロというものを目指して欲しいと思います。 |
■河合毅弥[かわい・たけや] 内野手/聖隷クリストファー3年/178cm80kg/右投左打
5歳から野球を始め、「浜北ブラザーズ」に入団。「浜松シニア」では主将を務め、2年秋のクラストカップで県優勝。聖隷クリストファー入学後、1年春から「3番ショート」で活躍。2年冬にキャッチャーとなり、3年夏はチームを県ベスト16に導いた。卒業後は明治学院大に進学する。
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大学では初めて一人暮らしを経験するという河合。「料理の練習はやっているの?」と伺うと、「全くやっていません」という答えが…。少し心配ですが、明治学院大には鈴木翔太とバッテリーを組んでいた石塚大祐も在籍します。先輩を頼って頑張って下さい。
次回は静岡市立・中川怜士編、お楽しみに!
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