静岡を巣立つ球児たち2016~佐藤蓮編・上
5年目を迎えたオフ企画、「静岡を巣立つ球児たち」。「静岡高校野球」編集部が卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。第3回は最速144キロをマークする大型右腕・佐藤蓮(飛龍)。卒業後は上武大に進学する佐藤のインタビューを2回にわたってお届けします。
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静岡を巣立つ球児たち2016~佐藤蓮編・上
★「日本代表」として全米選手権へ
佐藤が野球を始めたのは10歳からと少し遅い。幼い頃から3歳年上の兄とともに水泳に夢中になっていた。「水泳は得意で結構、泳げた方だった」と振り返る。
帰宅すると、沼津学園(現飛龍)野球部出身の祖父が毎日のようにテレビで野球を見ていた。次第に佐藤も、野球というスポーツに興味を抱くようになっていった。
そして、小学4年生の時に、友達と一緒に地元の少年野球チーム、「長伏ヴィーナス」に入団する。
最初はポジションと転々としていたが、5年生になり、自分から「キャッチャーをやってみたい」と名乗り出た。
「それまでピッチャーを含めてキャッチャー以外の全ポジションを経験したのですが、一個上の先輩のキャッチャー姿を見て、単純にかっこいいなって思いました」
小学6年生になると、すでに身長は162センチまで伸びていた。同級生と並ぶと、頭一つ、いや二つほど出ていた。
「長伏に大きなキャッチャーがいる」
そんな噂は、すぐに三島の野球関係者の間に広がっていった。 当初、本人は中学では軟式野球を考えていたが、谷勝利総監督から誘いを受けて、「三島シニア」に進む。
「三島シニア」に入団すると、同学年に、もう一人捕手がいた。のちに、日大三島で活躍する土屋大樹だった。佐藤は、そのセンスの良さに目を奪われた。
「シニアに入ってすぐ、土屋と二人で先輩のボールを受けたんです。それまで、自分は変化球を見たことなくてポロポロしていたんですけど、土屋は普通に捕っていました。ヤバいと思いました」
ピッチャーに転向したのは中学2年の時だった。ある日、飛龍の室内練習場を借りて練習を行った際、バッティングピッチャーとして投げていた。それを後ろから見ていた長津正幸監督から「蓮、お前、ピッチャーいけるじゃないか」と声をかけられたことがきっかけだった。
そこから佐藤は投手の練習に取り組み、徐々に頭角を現していく。2年秋からは、山本優輝(現静岡高)とダブルエースでチームを牽引。全国大会には縁がなかったが、3年夏にシニアの全日本メンバーに選出され、アメリカ・イリノイ州で開催された全米選手権大会に出場した。
佐藤は海外チーム相手に、130キロ台中盤のストレートを武器に好投。打っても、大事な場面で安打を放った。
★ガムシャラに投げた1年秋
高校からプロに行きたい。そんな夢を叶えるため、佐藤が選んだ進学先は飛龍だった。
「僕が中学1年生の時にシニアの練習を見に来た濱野(洋/監督)先生が、3年生と間違えたそうで、『この選手が欲しい』って言ってくれたそうなんです。そこから、ずっと飛龍のことが頭にあって、中学3年生になってから、本格的に熱心に誘ってもらって、ここで勝負しようと決めました」
一方、東部の宝として、じっくりと育てたいと考えていた濱野監督は1年夏のベンチ入りを見送り、秋から起用した。その秋の東部大会、初戦は沼津東と対戦し、好左腕・久郷太雅(現早稲田大準硬式)に投げ勝つ。続く相手は小澤怜史(現福岡ソフトバンク)を擁する日大三島だった。 佐藤は序盤に3点を許したものの、その後は要所を締め、飛龍の1点リードで終盤を迎える。
だが、9回に無死一二塁のピンチを迎え、何でもない投手前への送りバントを三塁へ悪送球。自らのミスで逆転負けを喫した。結局、飛龍は敗者復活戦でも敗れて県大会を逃した。
「1年の秋はけっこう、ガムシャラにやっていた感じです。冷静に考えないで、あたって砕けろって…。今思うと、そこからの自分に足りなかったのは、その姿勢だったかもしれません」
佐藤は、そうポツリと呟いた。
その後、制球面やフィールディング面に課題を残しつつ、「未完の大器」として月日だけが過ぎていった。
「どうやったら良くなるんだろう、どうやったら抑えられるんだろうって、考え込むようになってしまって…」
2年夏は背番号11でベンチ入り。佐藤に代わり、エースとなった伊藤塁(現静岡産業大)や同学年の杉山京吾の好投でチームは勝ち上がっていく。
ようやく佐藤に出番が回ってきたのは準決勝の磐田南戦だった。
11対1の大量リードの9回、初めて夏のマウンドを踏む。「緊張感して頭が真っ白だった」というものの、140キロをマークし、1イニングを無失点。あらためてポテンシャルの高さを見せつけた。
けれど、佐藤の苦悩は続いていく。
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「静岡を巣立つ球児たち2016~佐藤蓮編・下」は近日中に更新します!
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