オフシーズン企画「静岡を巣立つ球児たち」。今年も「静岡高校野球」編集部が、卒業後も野球を続けることが決まっている高校3年生たちに会いに行きます。
前回に引き続き、尾濵徹(浜松商3年)編です。 「静岡を巣立つ球児たち2016~尾濵徹編・上」はこちら!
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★静高のV3を阻む
夏の大会、浜松商は城南静岡、静岡西、小山を下して、4回戦に進出する。
4回戦の相手は戦後初となる3年連続夏の甲子園を狙った静岡高だった。
「静高戦の前の日に、いつも一緒に登下校していた大浜(空)と帰りながら『俺たち、このままなら静高に勝てるんじゃないか』っていう話をしたことを覚えています」
そう2人が自信を持ったほど、夏の大会に入ってから打線の状態が上向いていた。また、エースの大橋建斗も試合を重ねるごとに、球のキレが増していた。
さらに、鈴木祥充監督は秘策として2年生の左腕・増田理人も用意していた。
試合は浜松商が初回に1点を先制するも、その後、一進一退の攻防となる。
3回、もっとも警戒していた鈴木将平にライトフェンス直撃の一打を浴びて、これがランニング本塁打になってしまう。
「将平君はどこに投げても打たれる感じがあったのですが、逃げてはダメだと思っていたので、インコースの真っすぐとか、強気に攻めていきました」
浜松商は6回に1点のリードを奪うと、その裏から増田がマウンドに上がった。いきなり、3者連続三振。80キロ台から90キロ台の変化球が冴え渡った。
「この3者連続三振でカーブが通用するなっていうのはありました。鈴木監督からも『カーブは相手に分かっていてもいいから投げろ』って言われていたので、それを徹底しました」
そして9回裏、二死2塁のピンチを迎え、打者は鈴木将だった。ここでも尾濵は臆することなく、初球に緩いカーブを使った。結果、ライトフライ。浜松商のスタンドは歓喜に沸き立き、鈴木監督の頬を涙がつたった。
準々決勝では浜松学院を6対5で破ると、準決勝で待っていたのは因縁の相手・袋井だった。袋井は準々決勝で日大三島を撃破。30年ぶりの準決勝進出で勢いに乗っていた。
浜松商は初回に3点を先制する。しかし4回に7失点。その裏、すぐに同点に追いつくが、6回と7回に大量失点。結局、10対14で敗れた。
「途中、一気に流れが相手にいってしまって、もうどうすることもできませんでした。雨が降っていて大橋のボールは甘く入ってくることもあったのですが、ボール自体は悪くなかったです。もう少し、自分が何とかできたら…。今でも悔いが残っています」
★チームを1部に上げたい
尾濵は卒業後、愛知工業大に進む。現在は2部に低迷するものの、愛知大学リーグで通算17度優勝の名門だ。西崎幸広(元日本ハム他)、長谷部康平(元楽天)などプロ選手も多数輩出している。今季からチームの指揮をとるOBの平井光親監督も元プロ野球選手。かつてロッテに在籍し、首位打者を獲得した実績もある。
大学での明確な目標を持っている。2年時にレギュラーを獲得、そしてチームの1部昇格に貢献する。
「最初に(前監督の)奥田好弘さんから誘われた時に、『君の力で1部に上げてほしい』と言われました。まずはそこを目指して頑張っていきます」
昨夏、引退後は木製バットに慣れるため、主にティーバッティングを行って大学野球に備えた。
★尾濵徹からのメッセージ
最後に現役球児へのメッセージを聞いた。
「3年間、終わってみれば、すごく早かったです。後悔のないように、1日1日を大切に使ってください」
尾濵は高校でもっとも成長した部分に「配球面」を挙げる。1年秋の苦い経験を糧に1球の大事さを学び、3年夏には打者心理を読み解く好リードでチームを8年ぶりとなる県ベスト4に導いた。ひたむきに努力を重ねる精神は、後輩たちにも受け継がれるはずだ。
鈴木祥充監督からの贈る言葉
夏にベスト4まで行けたのは尾濵の力によるところが大きかったです。実直な性格で、まだまだこれから伸びる選手。大学では好きな野球を4年間やり切って、最後は「プロに行きたい」と自分で思えるくらいの選手になって欲しいと思います。 |
■尾濵徹[おはま・てつ]捕手/浜松商3年/166cm67Kg/右投右打
6歳の時に「岡崎野球スポーツ少年団」で野球を始める。岡崎中時代は「浜松南シニア」でプレーし、投手と捕手を兼任する。浜松商入学後、1年秋からレギュラー。3年夏は県ベスト4進出を果たした。高校通算16本塁打。卒業後は愛知工業大へ進学する。
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1月に発売した『静岡高校野球2017早春号』の「2016年夏監督が選ぶベストプレーヤーTOP10」という特集で、7位にランクインした尾濵。「特に浜松学院の吉田道監督があの子一人に負けたと絶賛していたよ」と伝えたら、「そんなことないですよ」と照れながら答えてくれた姿が印象に残っています。 鈴木監督も「大学でまだ伸びる可能性がある」と期待する捕手。強肩だけでなく、巧みなインサイドワークは、上のレベルにいくほど目立ってくるはずです。
さて、2016年版の「静岡を巣立つ球児たち」は今回が最終回の予定でしたが、3月に入って編集部に「合格が決まって野球やります!」という情報が寄せられ、さらに追加で数人に会ってきました。来週以降、ブログで紹介します!