ドラフト直前企画④ 静岡産業大・渡邉笑生/逆境を力に変えた長距離砲
運命のドラフト会議が明日に迫りました。志望届を提出した静岡関連の注目ドラフト候補を紹介する企画。最終回は静岡産業大の渡邉笑生選手です。
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今月17日に開催された東海地区大学選手権。4回に回ってきた第2打席だった。2球目が頭部に直撃し、球場は騒然となった。救急車で搬送されて心配されたが、試合が終わる頃には戻ってきていた。報道陣に向かって「ご心配をおかけしてすみませんでした」と頭を下げる姿に、彼の人間性がにじみ出ていた。
兄の影響で6歳から野球を始め、「静岡裾野シニア」時代、チームは全国制覇を成し遂げたが、自身は控え選手。高校では2年冬に右ヒジを手術、3年時に上がった直後には有鉤骨を骨折。夏は背番号15で4番を任されたが、決して目立った存在ではなかった。素質が一気に開花したのは大学に入学してから。1年秋にレギュラーに抜擢されるとリーグ戦で3本塁打を放ち、さらに東海地区大学選手権では長良川球場の場外までかっ飛ばした。
だが、順風満帆とはいかなかった。2年春のリーグ戦後に左膝前十字靭帯断裂と半月板損傷。手術とリハビリを経て復帰したのは、ようやく3年春だった。そこからの1年は苦しみ、もがき続けた。体が突っ込み、上半身に頼るスイング。「自分らしくバッティングばかりで…。逆方向に強い打球が出ないし、打ててもたまたまの打球。納得できませんでした」
今春の日大国際関係学部戦。プロ注目の林京平に対して3打席連続三振を喫した。「コテンパンにやられました。同じ目標を持っている選手に対してああいう結果になって、絶望してしまって」
春で引退しようか――。そんな思いも頭をよぎった。そのとき、萩原輝久監督の言葉が火をつけた。
「プロを目指せるところまできているんだぞ。全員にチャンスがあるわけじゃないんだから、最後まで勝負してみたらどうか」
この秋は“蘇った”どころか、大きな進化を見せ、猛烈なインパクトを残してくれた。リーグ戦で4本塁打(うち1本はランニング本塁打)を記録。マークされながらのこの数字は、1年秋に打ったものとは意味合いがまったく違う。
衝撃的だったのは10月5日の日大国際関係学部戦。勝ち越し本塁打はレフトフェンス直撃かと思われたが、そのまま打球が落ちず、ちゅ~るスタジアムのレフトスタンドに飛び込んだ一発。勢いは止まらず、プレーオフでは草薙球場の右中間に逆転3ランを放った。
「大学では足をケガして、そこから自分の体を見つめる時間が増えました。リハビリはきつかったですけど、プラスにとらえるしかないと思ってやってきました」
天性の飛ばす能力、そしてケガを乗り越えた先にたどり着いた逞しい精神力。この2つを武器に、プロの舞台で勝負してほしい選手だ。
■渡邉笑生[わたなべ・わらう]
2004年1月20日生まれ、静岡県御殿場市出身。「御殿場ファイターズ」では6年時に県大会出場。「静岡裾野シニア」では全国優勝を経験した。知徳入学後、右ヒジ手術を経て、3年夏は4番を務めた。大学では1年秋からリーグ戦に出場。今秋は本塁打王を獲得した。180cm90kg、右投右打。
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